冬のなごりと春のはしり





文化初(1804)年、大坂の高津神社の東に、江戸の亀戸梅屋敷を模して梅林を植えた梅屋敷が開かれた。如月の梅の盛りの頃は、多くの人が繰り出し、連歌や俳諧や狂歌、演奏や踊りを楽しんだという


山菜と鮑、車海老、梅の香り

212日の夜、東大寺の二月堂の本尊十一面観音菩薩に供える香水を汲みあげることからお水取り、練行衆が上堂する際に足元を照らす大松明で先導することからお松明とも呼ばれる春を告げる行事は、天平勝宝4(752)年から現在までつづけられている。日本の生活文化には、仏教が根差している

日本の食文化は、古来より、野菜と魚と鳥が中心だった。日本の料理も、仏教の教えもあり、獣肉は敬遠されていた。室町時代までの料理の膳に並ぶ鳥は、雉(きじ)が主役だった。江戸時代に入って主役は鶴に移ったが、実際は雁(がん)や鶏(にわとり)が多く食べられたという

「鴨が葱(ねぎ)を背負って来る」という都合の良い状況をあらわすことわざであるが、鴨料理からうまれている。鴨は食感が柔らかく脂(あぶら)が甘い鴨肉だが、野鳥特有の匂いがあるために、葱などの香味を加えて旨(うま)みを高める。この鴨と葱を組み合わせた鴨鍋や鴨南蛮そばなどがうまれた

琵琶湖に飛来する冬の鴨は身が引き締まり、徳川幕府に献上されたこともあったようで、冬の料理の貴重な食材だった。現在も、琵琶湖には、鴨が飛んでくる


冬の寒さのなかに感じるかすかな春が近づいている季節、冬のなごりと春のはしり、お水取りをテーマにした八寸をご用意しました。河豚を福になぞらえ、河豚(福)八寸

福いっぱいを感じていただきたく、河豚の白子と、河豚の唐揚げをお出しした