見立てという日本料理の方法論

 


日本文化の本質のひとつに、見立てという方法論がある。

あるものを別のもので示すという表現法であり、元来、漢詩に学んだ和歌を詠む方法論として見立が高度に発達して、日本人の精神文化として刻まれていった

枯山水。自然の景観を砂と石で見立て表現する。白砂に描く砂紋の模様で、渦やさざ波を表現する

茶道の茶道具は、見立てで発達。京都桂川の漁師が魚をとるときに腰につけていた魚籠(びく)に見立てた「桂籠」と呼ばれる花入れ。「釣瓶水指(つるべみずさし)」は、井戸からくみあげ水屋にはこんで水差しとして使うものにして見立てた茶道具

日本料理も、季節の風景、花鳥風月、節句・旬の様々な生活行事を、器と料理で、表現する見立てが本質である

 


さて、大阪伏見町の日本料理栫山の料理。

お席につかれ、まず一口は、焼きたての栗で

新嘗祭を、赤飯で、祝っていただき

五感で、お浸しを味わっていただき

造をふたつ。まず造りの一品は蟹造り。二人目の造りは、九会をゆびき、紅葉おろしを見立てました

ここで一休み。柿とブランデー梨の水菓子

冬の出会いものとして、蕪とあよ鯛のお椀

八寸は、秋風で吹き寄せられた紅葉の落ち葉を箕と料理で見立てました

イルミネーションで映える冬の御堂筋に寄せて、白子ほう葉焼、一本の銀杏並木を見立てました

お米からご飯に変わる一歩前の瞬間、瑞々しく甘く美しい煮えばな

大阪なんば葱の巾着餅で、寒い冬に温めていただきます

始末の心を込めた船場汁で、本日の料理を締めくくらせていただきました


冬の出会いものと見立ての日本料理栫山の物語でした

                  (社会文化研究家 池永寛明)

船場で企業人として40年間勤務したあと、社会文化研究家として、ビジネス文化、大阪の風土と文化、食文化を研究し、note日経COMEMOキーオピニオンリーダーとして、https://note.com/hiroaki_1959/などで、情報発信中